成年後見制度はどういった場合に申立てがされるかというと,判断能力が不十分な人が介護施設に入所したり,施設と契約したりするには本人がするには困難であるため,法定代理人が必要となるケースです。その場合,家庭裁判所に申立てをして成年後見人が選任されます。
他に、申立てがされる理由としては,預貯金の払戻しや遺産分割協議などもあります。
成年後見開始の申立てができる人は,本人・配偶者・4親等内の親族や市町村長,検察官や未成年後見人,保佐人などと規定されています。
市町村長による申立てとは、判断能力が不十分な高齢者や精神障碍者などのため、市町村長が、老人福祉法第32条、知的障害者福祉法第28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第51条の11の2の規定に基づき、成年後見、保佐、補助開始の審判を請求できます。
4親等内の親族とは,配偶者や4親等内の血族,3親等内の姻族をいいます。姻族というのは婚姻関係によって生じた親族のことをいいます。
本人自身が申立てをすることも可能ですが、後見相当では難しい場合もあります。
申立書等を作成する際には、本人や親族、介護事業所の方々などと直接会って、事情聴取などを行います。それから、必要書類を集めて、後見開始の審判申立書を作成します。
管轄となるのは,本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。もし,施設に入所していれば,住民票上の住所と異なっている場合もあり,その場合には家庭裁判所の管轄も異なるケースもあるため,あらかじめ確認が必要です。
申立てをするには,申立書を作成して家庭裁判所に提出する必要がありますが,これは司法書士が作成することが可能です。
なお,成年後見開始の申立てをして,途中で申立てを取り下げようとしても、本人の保護を重点に置いているため,家庭裁判所の許可が無ければ取り下げることができません。
後見等開始の審判がなされた後,申立人,本人及び後見人それぞれに対して,審判書謄本が送達されます。それから,2週間が経過すると後見等開始の審判が確定します。
審判が確定しますと,家庭裁判所は,東京法務局に対して後見登記の嘱託を行います。その後,家庭裁判所から登記番号が通知されますので,法務局にて登記事項証明書を取得します。この登記事項証明書が今後の後見事務に必要となってきます。
後見人に就任しましたら,1カ月以内に財産目録、収支予定表を作成して家庭裁判所に報告を行います。成年後見事務に着手して、その後も家庭裁判所に対して,定期報告を行っていきます。
財産目録を作成するまでは,本人と後見人の財産が混同することを防ぐため,財産の処分などの権限は認められません。ただし,急迫の必要がある場合には,必要最小限の行為のみすることが可能です(民法854条)。できるだけ早く財産目録を作成することが求められます。
報告書には,本人の生活状況や健康状態,財産の状況,収支予定等について報告を行っていきます。
一般的には,後見事務報告書,財産目録,収支状況報告書,収支予定表,預貯金通帳の写しなども一緒に提出します。
後見人の職務には財産管理と身上監護があり,財産管理というのは,主に預金通帳の保管,預金の入出金の管理,不動産の管理などを行います。財産管理では本人の財産と後見人の財産が混同しないように注意する必要があります。もし,多額の預貯金があれば,後見制度支援信託という制度の利用も検討されます。
後見人として財産管理を行うには,被後見人の預金通帳などの引渡しを受けておくことも必要となります。施設や親族が預金通帳を管理していることもあり,その場合,引渡しを受けることになります。
金融機関に成年後見人に就任した旨の届出を行います。
支出に関する費用としては,食費,医療費,介護サービス費,各種保険料や日用生活用品費などがありますし,各種保険料の支払いといった定期的に支払うものは口座振替にしておけば支払い忘れを防げます。また,口座振替を利用していれば,支払いの状況が預貯金通帳に記載されますので,支出の管理がしやすくなります。
そして、身上監護とは,病院と入院や治療等の手続きをすること,健康診断等の受診契約手続き,障がい者手帳の交付手続き,施設等の入退所に関する手続き,介護サービスの契約を含めた手続きをして本人を支援します。また,訪問などにより本人に異変がないかの見守りなどを行います。
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